移住者インタビュー

自然と共に生きていく

南風農園 水野浩司さん
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オーストラリアの大自然が自分を変えた

旅行関係の専門学校を卒業し添乗員として国内を回っていた水野さん。そんな中ワーキングホリデーを知ったのは、当時の社長からかけられた言葉がきっかけでした。
「水野くん、海外で添乗員やりたいって言っていたけど、ここの社員はみんなワーキングホリデーとかで、ニュージーランドやカナダ、オーストラリアとかに行っているんだよ。1 年間英語とか学んで修行してきて、また復帰したら良いよ。」
この言葉でワーキングホリデーに心を掴まれた水野さんは、高校時代にホームステイで2 週間滞在したことのあった、縁のあるオーストラリアに行くことに。
英語を学ぶことはもちろんの事、オーストラリアを一周し、スキューバダイビングのプロ免許を取ることを目標に旅は始まりました。
そんな旅の途中、シドニーで仲良くなった友達から一緒に農業のアルバイトをしないかと誘われ、バンダバーグにあるトマト専門の農園カークスファームで働くことに。この経験が人生の転機でした。

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あたり一面のトマト畑。地平線が見えるほど広い農場。大きな機械に乗っての収穫。みんなで汗水流して農作業。
「なんて面白いんだって思ったんです。都会に憧れていたのに、この時から“太陽のもとで働きたい、土にまみれて生きたい”っていう風に思いましたね。」と水野さん。
埼玉県に生まれ、いつか東京で暮らす事を夢見ていた、そんな価値観が180 度変わって農業を志すことになった瞬間でした。

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就農までの道のり

希望に満ち溢れていた水野さんは2001 年夏に帰国。その後、日本とオーストラリアのギャップに悩まされ、辛く憂鬱な日々を過ごしていました。そんな中、電車の中吊り広告で北海道の占冠(しむかっぷ)トマムスキー場のアルバイト募集を見かけます。アルバイトしながら北海道を満喫したいと思った水野さんは同年冬から北海道へ行くことになり、これがきっかけで辛く憂鬱な日々を脱出。ラベンダーで有名なファーム富田さんや、オーストラリアで仲良くなった友人の実家の蕎麦屋さんで働きながら約11 ヶ月北海道に滞在しました。その後、もともと旅が好きだった水野さんは、埼玉を拠点にお金を貯めてあちこち旅をする生活を続けていました。

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「その間ずっと迷っていたんです。農業をやりたいと思って帰ってきたんですけど、その気持ちっていうのが、漠然とした農家になりたいっていう単なる憧れでしかなかったんですよね。自分でやるって相当な覚悟だよなってその当時は思ったんですよ。それで25 歳までずっと迷って。25 歳で今後を決めないとって親からも言われていたし、自分も納得してたので、じゃあ何するかってなった時にやっぱり農業だよな、農業の道にいくしかないよなって、怖かったけど当時はね。」
前に進む事を決めた水野さんは、茨城県水戸市にある日本農業実践学園に入学し、半年間かけて農業を学び、2005 年に茨城県常陸太田市で就農しました。その後、お客さんの一人だった奥様の美香さんと出会い、水野さんの農園へのファームステイをきっかけに結ばれ2007 年に結婚。翌年から二人三脚での農業が始まりました。

南郷で農業をやってみたら?

ある日、美香さんのお母さんから提案がありました。
「実家が青森県八戸市にあって、広い畑だったり、トラクターや倉庫もあるし、おじいちゃんおばあちゃんも一部貸してもいいよって言ってくれてるから、一生農業で食べていくんだったらそっちへ移住してやったらいいんじゃない?」
茨城県にお客さんや仲間がいた水野さんは、せっかくのお誘いでしたが、どうだろうと半信半疑でした。その後、現地を見てみることになり2010 年の初夏に八戸市南郷を訪れます。
「その時はどんなもんかなって思って来たんですよ。けど、うわー!ここオーストラリアとそっくりじゃん!と思って。こういう風景とか、牧場の方も広くて。単純に美しかったんですね。その風景に僕はやられて。こんなところで農業できたらいいなって思ったんです。」
美しい南郷の風景に心奪われた水野さんは南郷への移住を決心しました。

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空き家を利用して土台ある環境での出発

いろいろな農家さんを見てきた水野さんは、新規就農者が皆同じところで苦しんでいると言います。トラクターを入れる倉庫がなかったり、作物の保管場所や加工場がなかったり。
新規就農者は、それらの問題をお金と時間をかけて解消し、農業のためのインフラ環境を整えていかなければなりません。実際に、水野さんが茨城県で就農した時は倉庫がなく、トラクターは雨ざらしになっていたと言います。トラクターなどの機械は雨ざらしにすると、いくらブルーシートなどで覆っていても地面からの湿気によって錆びるなどの劣化が早まってしまうそうです。
そんな中、奥様のお母さんのご実家の、使われていなかった厩舎や倉庫を使って農業を始められることは大きなチャンスでした。

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「環境が整った状態で農業を始められたことは、とてつもなく大きかったですね。すごく恵まれていた。この厩舎や倉庫がないと何もできないよなって改めて思う。毎年何か仕事を広げるたびに、ここがあっての今のやり方だよなっていう事を痛感させられるんですね。古い建物はメンテナンスにお金がかかるというデメリットはあるけれど、土台があることで“やりたいことへの実現のステップをすごく短くできる。”インフラを整えるプロセスはとても大事だけど、農業を1 代目から成功させるっていう目標を持つためには、インフラを整えるには時間が足りないと思ったんですよ。今の僕の立場から言うと、インフラを整えることはとても大事だけど、そのために時間とお金をかけることが最小限で済むのは本当にありがたい。もっと農作物に向き合っていかないと自分の代ではどうにもならないと思ったんです。」

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かつて厩舎だった場所は事務所や作業場、機械などの置き場所として使われています。移住当初は厩舎内に居住スペースを作り、そこで生活していたこともあったそうで、この物件が水野さん達にとって非常に大きな存在であることがうかがえます。

こだわりのにんじんジュース

南風農園の野菜は“美味しさ”にとことんこだわって作られています。中でも看板商品であるにんじんジュースは、生で食べても美味しく、にんじん嫌いの人でも食べられるような人参の品種を3種類厳選して栽培し、それらをブレンドして作られています。にんじんジュースには誰でも飲みやすいようにブレンドされた「nikoniko にんじんリンゴジュース」と、ほとんどにんじんのみで作られている「まるごとにんじんジュース」の2種類あり、どちらも食物繊維たっぷりの濃厚な仕上がりで、まるごとにんじんジュースに至っては、1L あたり約1300g ものにんじんが使用されています。濃厚だけど飲みやすくスッキリとした甘さで、にんじん独特の匂いを抑えつつにんじんの良さを引き出した、今までのにんじんジュースの概念を覆す美味しさです。

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八戸市南郷から野菜の魅力を伝えていきたい

「今後の目標は、にんじんで経営を成り立たせることですかね。農業で飯を食っていくって事は簡単ではない、もっとにんじんを極めていきたい。にんじんのスープだとか、加工品を増やしていきたいですね。いろんな商品を通して野菜の魅力をお客様に伝えていきたいです。」と語る水野さん。
野菜の美味しさから驚きや感動を、そしてそれらを通して農業に興味を持ってもらいたい。人間と自然の融合である農業が生み出した野菜に、こだわりの美味しさをプラスすることで、南風農園の経営理念にある「健康を育み感動を生み出す」ということに近づいていきたい。野菜と向き合うことに全力を尽くす水野さんのエネルギーが力強く伝わってきました。

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ホームページ
http://www.nanpufarm.com/