八戸市での起業事例紹介

”なんか楽しそう”が続々と生まれる 市民集団「まちぐみ」の活動拠点

まちぐみラボ

まちぐみラボ

本八戸駅から街なかに向かって歩いていくと、ほどなくして右手にちょっとおしゃれで一風変わった建物が現れます。

2014年10月に発足した、八戸に゛なんか楽しそう“を作り出す市民集団まちぐみの活動拠点「まちぐみラボ」です。

参加条件は、八戸が好きな方であること。誰でも組員になることができます。

まちぐみ組長は、八戸に惚れ込み、八戸市南郷島守にIターン移住してきたコミュニティアーティストの山本耕一郎さんです。

2018年12月現在、八戸市の人口の約0.2%に相当する440名が所属。小学2年生から年配者までが活動に参加し、小林眞市長もまちぐみ組員(8号)です。

参加の動機はさまざま。「まちを元気にしたい」「まちづくりの役に立ちたい」「育ててくれたまちに恩返しがしたい」「まちで楽しいことがしたい」などです。

ご縁をつないでいただき この物件に出会いました

現在のまちぐみラボは、二カ所目。本八戸駅にほど近い、内丸町内会エリアにあります。

「町内会が一所懸命活動していて、街なかに近い場所にラボを置きたかった。ご縁があって、いまの場所を紹介していただいたんです。以前、街なかにあった拠点と較べ、広さは10分の1とコンパクトになりましたが、かえって活動しやすいスペースになったかもしれません」と山本組長。

もともとは生鮮食品を中心とした商店でしたが、オーナーさんが高齢のため店を畳み、空き店舗になっていました。

空き店舗
(写真提供:山本耕一郎さん)

リノベーションは、「おしゃれ感」をコンセプトに、まちぐみ組員や地元の皆さん総出で行いました。

なお、建物の奥には、現在でもオーナーさんが住んでいるそうです。

リノベーション
(写真提供:山本耕一郎さん)

なんだか面白そうな ちょっと気になる注目拠点に

一階は展示と活動スペース、調理のできる空間もあります。そして頭をぶつけそうな狭くて急な階段を上ると二階は工房になっています。

展示と活動スペース

展示と活動スペース

展示と活動スペース

「ラボを開けている日は、いろいろな世代の組員が入れ替わりで来てくれます。街なかに話題の場所ができたこと、夜は21時まで街灯を照らしていることから、通りが明るい雰囲気になったと喜んでいただいています」と山本組長。

ちょっと懐かしいタイプの自動販売機

ラボの外には、ちょっと懐かしいタイプの自動販売機が置かれています。近寄ってみると、柿ドリンク、ウコン入りドリンク、ハングル語表記のドリンクなど、一風変わった品揃えです。

これも活動のひとつ。山本組長が中古の自販機を購入し、意見を取り入れながら面白ドリンクを販売しています。通りがかりの人たちが足を止め、写メを撮り、買っていく姿が見られる隠れた人気スポットになっています。

ひとりではできなかった夢を 実現していきます

まちぐみを発足してすぐ、ご近所にある着物屋さんのディスプレーのマネキンを、悪代官が帯回しをするという作品に仕上げました。"ふざけているけどなんだか面白い"ということで、口コミやネット、SNSで拡散され、訪れた見物客と着物屋のスタッフさんとの会話が生まれました。

県南地方の伝統工芸「南部菱刺し」を八戸ポータルミュージアムはっちの椅子の背に刺すプロジェクトや、南部せんべいを新感覚スイーツにしてしまう「高校生とつくる南部せんべいカフェ」プロジェクト、合掌土偶「いのるん」のぬいぐるみやコースターを制作するプロジェクト、三社大祭の廃材であそぶ企画等々、まちぐみ組員の声をもとに活動が生まれていきます。いずれも誰でも参加できる活動です。

八戸ポータルミュージアムはっちで活動の展示を行い一般のお客さんが興味を示してくれたり、商品が売れたりするだけで活動の達成感が生まれるという声が多いそうです。

この日、「まちぐみ」の定例会と忘年会が開催されました。日の暮れた早い時間から、高校生とつくる南部せんべいカフェ部とりさん、菱刺し部エトさん、まかない部ゆかりさんがラボ内を温めてくれていました。

忘年会

まちぐみの魅力について、組員のひろしさんに話を聞きました。「山車組に所属して三社大祭の山車づくりをしています。じつは祭りが終わった後、大量の廃材が出るのが悩みのタネでした。そこで組長に相談して、三社大祭の廃材を使って工作部で自由に何かを作る企画を立ち上げさせてもらいました。存在のどでかい組長が居てくれるので、とてもやりやすいですね。やりたいことをやらせてもらえる上に、そこから先に進ませてくれるんです。ここをスタートに有名になる人がいるかもしれない。まちぐみは、きっかけを作ってくれる場所ですね」

また高校生とつくる南部せんべいカフェのとりさん&ボンボンさんは、「活動に参加して、いままで知らなかった食べ物やまちを知ることができました。ここは新しい人たちと出会える場所ですね。活動に参加すると、毎回新しく加入した人が居るんです。組長は、面白くて盛り上げ役です」と、山本組長をお兄さんのように慕っていました。

そうこうしているうちに、次々と組員が増えていき、あっという間に空間は人でいっぱいになりました。山本組長は、そのひとりひとりに声を掛け、和ませます。

山本組長が暮らす南郷島守からも応援があります。島守中学校の校長先生とのつながりから、「まちぐみ」の活動に、3年生が10名も参加してくれるようになりました。

忘年会

「八戸に暮らす人たちにとって、ひとりでは出来なかった夢を実現する場所になっているといいですね。活動に参加しているうちに、なんだか目が輝いてきた、生活に潤いが出てきた、という市民が増えていくことが、まちづくりにつながるのって素敵じゃないですか。継続していくことを目標に活動を続けていきたいですね」たくさんの組員に囲まれながら、山本組長はこれからのゆるやかな目標を語ってくれました。

忘年会

組員の゛なんか楽しそう“゛おもしろい!”゛これ、やりたい”に耳を傾け、実現に向けてすぐ行動する、夢の可能性を広げるまちぐみ。まちぐみラボをせんべいカフェにする展望もあるとか。

今後も、ここからどんな楽しい活動が生まれるのか、目が離せません。

まちぐみ

http://machigumi.main.jp/about.php

まちぐみ受賞歴

  • KIBOW 第2回 年次大会 準優勝(2015年)
  • 青森県 第8回ふるさとあおもり景観賞 地域づくり活動部門 最優秀賞(2016年)
  • 第9回 地域再生大賞 ブロック賞(2019年)