ドッグラックポラハ
八戸市豊崎町にある一見普通のお家。ここにワンちゃんのお預かり施設「ドッグラック ポラハ(以下ポラハ)」があります。ポラハでは、お預かり以外にも訓練やドッグランなど、ワンちゃんや飼い主さんに嬉しいプランや環境が揃っています。
はじまりは3匹の家族との出会いでした。
ワンちゃん好きな娘さんに影響され、ワンちゃんが大好きになったオーナーの森琢人さんは、約14年前からワンちゃんと過ごし始め、「ポップくん」「ラン丸くん」「ハクくん」という3匹の家族と出会います。信頼関係を築きながらの充実した日々、病気や別れなど辛いこともありましたが、3匹の家族からたくさんのことを学ばせてもらったと森さんは話します。「ポラハ」という名前は亡くなった3匹の家族から1文字ずつもらってつけた大切な名前です。
命の期日は、あと数日。
ポラハの看板犬であるベックくんとの出会いは、今から約6年半前。ポップくんが亡くなって辛い日々を過ごしていた頃でした。
動物愛護センターには、譲渡の対象となるワンちゃんとそうでないワンちゃんの2種類がいるそうで、譲渡犬は家庭にも慣れていることが多いため、動物愛護センターから里親の募集などが行われますが、譲渡犬でないワンちゃんは殺処分の対象となってしまうことがあります。猟犬として育てられてきたベックくんは、その対象となっていました。
「命の期日は、あと数日」。この言葉を目にした森さんは衝撃を受けます。
とにかく助けたいという一心で、すぐに仲介となるボランティアの方へ連絡しベックくんを引き取ることに。猟犬として訓練されていたため、初めは鳥を追いかけるなど散歩もできないほどだったそうですが、森さんの熱心なしつけによって見違えるほど穏やかになりました。そして今ではすっかり甘えん坊。昔のベックくんを知っている方は、あのベックが!と驚かれるそうです。
ワンちゃんや飼い主さんの力になりたい
森さんは定年退職が迫る中、今後どのような仕事をしていくか考えていました。その時思い出したのは、病気だったポップくんやラン丸くんを家に残して仕事をしていた時のこと。
「一人家に残すのは心配だけど、仕事に行かなきゃ」
「仕事に行っている間に亡くなっていたらどうしよう」
同じ状況の飼い主さんの力になりたい、老犬や病気のワンちゃんたちの力になりたい、そして「ポップくん」「ラン丸くん」「ハクくん」という3匹の家族から学んだことを、たくさんのワンちゃんにお返ししたい。その思いが起業の道へのきっかけでした。
物件との偶然の出会い
森さんは、3年ほど前から知り合いの方に声をかけるなど、起業のための場所を探していました。そして一昨年の3月、知り合いの方に紹介してもらう中で、偶然この物件と出会います。
「この値段でこの広さ、宝くじに当たったような感じだった。ワンちゃんたちにとって、とても良い環境だと思った。一目見て頭から離れなくなってすぐに連絡しました。」と森さん。
一般的なワンちゃんのお預かりでは、基本的にケージに入れて、散歩やトイレの時だけケージの外に出すようです。ポラハでは、完全にケージを使わないわけではありませんが、ワンちゃんの状態に合わせて、庭で過ごしたり屋内で過ごしたり、のびのびとリラックスした時間を過ごせるような環境づくりがされています。
リフォームをすることでより良い環境を作ろうと考えていた森さんにとって、この広々とした庭と和室が複数備わっている物件はとても適していました。
築年数が約50年のこの物件は、10畳の和室が3つ連なる広い造りをしていました。この物件と同じくらいに建てられた家は、和室を複数備えていることが多いそうで、限られた予算の中で広々とした間取りと十分な敷地面積を確保するという難題の解消に、この年代の空き家を活用するという選択がとても良かったと森さんは話します。
リフォームはワンちゃんのために
居住スペースに関しては必要最低限のリフォームにとどめ、ワンちゃんのために力を入れてリフォームを行ったそうです。3つの和室をつなげた広いこの部屋は、壁・床・天井が綺麗にリフォームされ、トレーニングに使うなどワンちゃんたちの部屋になっています。森さんのワンちゃんへの愛情が伝わってきますね。
森さんの趣味の音楽部屋も作られており、人と犬それぞれがより良い環境で過ごせるようにリフォームされています。今後はレッスンスタジオとして使用していくことも検討されているとのことです。
庭には芝が植えられ、周囲にはフェンスが設置されてドッグランになりました。100坪を超える広い敷地で、ワンちゃんたちは元気よく駆け回っています。
他にも庭には、東屋や納屋、トレーニング用の小屋があります。東屋はもともと資材置き場でしたが、ワンちゃんたちの日除けの場所に。
納屋は綺麗に掃除され、ワンちゃんの休憩場所としてだけでなく、展示会が行われるなど交流の場としても活用されています。
ポラハのこれから
老犬や病気のワンちゃんは預かってもらえないことがある。分け隔てなく、力を必要としているワンちゃんたち、そして飼い主さんの力になっていきたい。犬と人、犬と犬、人と人、みんないい関係になれるような、そんな場所にしていきたい。ポラハをこころよく迎え入れていただいた豊崎町の皆さまに感謝していますと話す森さん。
ポラハでは、発表会や展示会などのイベントも開催されており、ワンちゃんと人、ワンちゃん同士や飼い主さん同士のふれあいの場として、これからもたくさんの笑顔が集まりそうです。
「ワンちゃんとの暮らしは、私たちの生活に楽しさと潤いを与えてくれます。その反面、しつけや散歩などたいへんなこともたくさんあります。お見えになるお客様の中には、吠えや咬みといった問題行動に困って相談に来る方がいらっしゃいます。八戸市内にはしつけを行うトレーナーさんがおります。ワンちゃんとよりよく過ごすために、できるだけ早めに相談し、ワンちゃんと充実した生活を楽しんでいただければと思います。」と、ワンちゃんとの充実した生活を過ごしていくためのアドバイスをいただきました。
もともと賃貸住宅で暮らしていた森さんは、空き家を活用することで、起業のための場所と同時に、自身の居住の場所、そしてワンちゃんとより良い関係を築くための場所を理想の形で手にすることができました。起業や移住のためだけでなく、ペットと共に暮らす環境としても、空き家を活用するという選択に大きな魅力を感じました。
ドッグラックポラハ
ところ:八戸市豊崎町下永福寺33